あなたの知らない84ゴジラ造型の世界 第3夜②
ばーちゃん!僕のビデオに土曜ワイド上書きしないで!!
猫族です。
大好評だった「ほん呪」(笑)、後編です。お待たせ!
このビデオですら知ってる人が複数名。どうなってんだこの業界は。
「さすがにこのネタは知らんだろう」と思っていても、知ってるどころか、「こーゆーのもあるよ」ってメールいただきますからね(笑)。
今回のお題はコレ。
ビデオの中で紹介されていたのはこの84です。
●ゴジラ復活 速水仁司
モデルグラフィックス85年1月号
ね、ドメジャーです。そして、傑作です。
あのビデオ内84ゴジラは、このMG誌85年1月号の作例としても用いられています。
製作時期から考えても、ビデオ内で手捏ねしてた粘土はこの84とは確実に別物(笑)。おおらかな時代ですな。
パオパオさんのデータベースで用いられているのもこの表紙カット。
あくまでスーツ版準拠で造られていますが、このカットだとサイボットや雛型の面影もチラつきます。腰のクビレが実にサイボットっぽくて格好良い。
横から。驚くほどに印象が変わる!
このホリゾントも含め、ジオラマが実に良い。
ゴジラを“昼間”の高層ビル街に立たせるっていう極めてシンプルな発想なわけですよ。このあたりが実に84年!なんです。ゴジラ伝説のジャケにも通じますね。
今の時代だと、84ゴジラは、絶対にこういうジオラマにしませんよ。そもそも夜にするでしょう。
前回のネタ的要素だけでなく、実際、良いですよ、このビデオ。
●この「30cm」には意義があるんだ。
ビデオ中での特写(動画!)より背びれ周辺。
サイドの極小背びれに注目。実に上手い処理である。
反面、削り出しでおこなわれた(!)彫刻的なウロコディティールの繊細さ。
同じく劇中特写より。
正面顔は、左サイドもまたサイボットを思わせる造型となっていることが解る。
そもそも速水氏はGSVとバンダイ、タカラの一連の仕事もあり、ゴジラ原型師として非常に有名、かつガレージシーンに重要な役割を果たした原型師であるが、我々の印象以上にゴジラ造型は少なく、30㎝サイズではコンバットジョー外皮を除くと、この84のみである。
速水氏が「30㎝サイズでどのようなディティール処理を行うか」が垣間見え、非常に興味深い。
●リアルホビーの幻想
リアルホビーシリーズがその販売を順調に継続していた場合、84は発売されていたでしょうし(実際開発中の一文は見た気がします)、その際の原型師は、まず間違いなく速水氏が起用されていたのではないかと思います。
この時期の海洋堂系の原型師の方々のタッチって、なんというか…「都会的」なんですよ。
故に、「生真面目な」「都会的」映画である「ゴジラ」には、非常に「合う」んです。
パッケージも、それまでのマルサンオマージュからがらりと変ったクールなテイストになったのではないだろうか? 上記の特写とか、サイドあたりに絶対使われたと思う(笑)。
30㎝塩ビ、発光ギミック付きの新ゴジ、欲しかったなぁ…。
●そして、素晴らしき造型であること
このゴジラは、「あなたの知らない~」というほどマイナーではない造型ですが、絶対に取り上げたかったんです。
キット化されていない…などももちろん理由のひとつですが、とにかく、造型が素晴らしい。
特に好きなのが、この斜め上からのカットの眼付きの悪さ。
長めに作られた爪が醸し出す手首周辺の表情も、実に84ゴジラのイメージ通りのものとなっています。
何より、全体から溢れ出す「1984年」的アトモスフィア!
1984年を真空パックしたかのような造型である。
個人的にもベスト84造型のひとつであり※1、全84造型の中でもトップレベルに位置する名作だといえる本作。
未キット化なのは、実に惜しい。
そもそも84ってガレージキット「業界」が初めてリアルタイムで体験したゴジラなんですよ。これ、今の感覚だと全く想像もつかないと思うけど。
で、ここが凄く面白いところなんですが、つまり、他のゴジラ造型のように「過去何十年と自身の中にあった」ゴジラ像の現出、ではないわけです。
特に、スケジュール的に上映前に造られたであろうこの作例などは、非常に面白い立ち位置にあります。
ポーズ付けひとつとっても、おそらくこのタイミングでしか成しえなかったポーズでしょう。
それでもしっかりゴジラ造型してるのは、やはり本物の怪獣好きにしかできない仕事だと思います。
やはり、私の中でもとても大事な存在なんですよ、この作例は。
じゃなきゃ、25年もビデオを探したりしませんよ。
この84は速水氏最後のゴジラ造型となりました。そして、氏の30㎝ゴジラの造形表現も堪能できる作品です。
このMG誌、比較的入手も簡単な号だと思いますので、皆さんも是非堪能してください。
さて…次回は「あなたの知らない84ゴジラ造型の世界 第4夜
」!
まだあんのか(笑)!まだあるんです、大物が!の巻 をお楽しみに~!
※1
・森山直哉氏作、原氏改造モデル
・中井三郎氏作、ラテックス製巨大モデル
・そして、この作品。
俺の好きな84って、ぜ~んぶ非売品なんだよね(泣)。