あなたの知らない84ゴジラ造型の世界
ヒュ~ドロドロ!
猫族です。
予告通り、納涼企画!!
題して「あなたの知らない84造型の世界」!! 先ず1回目は、認知度の高いモデルから。
● ゴジラ 製作:ヤマダマサミ HJ85年1月号
ポリ樹脂製 50㎝
HJ本誌85年1月号表紙を堂々飾った大作。イキナリ有名どころですな。
この巨大感!乱立する巨大な背びれ群、力感みなぎる各部の造型がたまらない!
何気に生頼ゴジラ立体化第1号だったりする。
背びれや横顔の印象から、スーツ版準拠のように見えるが、「生瀬ポスターをベースに、ひな型、スーツ、サイボットの特徴を盛り込んだ」コンセプトモデルとされている。
なんせ映画に合わせた、ゴジラ特集号表紙モデルですから、これは寧ろ有名モデルの範疇に入りますよ。
当時からHJ本誌を購読していた方は、皆、知っているのではないかと。
ただ、このモデル、案外謎が多いと言うか…。
誰もこの写真以外を知らないモデルなんですよ。
特集ページに、全身像が載ってない。だから実際のバランスが全然解らない。
表紙と同じローアングル写真と製作文のみが、紙面途中の見開き頁に掲載されている。特集ページ内にメイキング写真がなかったことが、くれぐれも悔やまれるモデルといえます。
ヤマダ氏のブログから解ることは
・もともと小学館でやってたジオラマ絵本用。※1
・企画が流れた為、HJに使用された。
・そのため、製作者名は絵本メンバーから借りた。
以上から、ラテックスモデルの原型として造られていたものを、ポリ抜きしてHJ誌表紙に流用、という流れかと。※2
因みに、頭部のみラテックスで複製され、手踊りモデルとして特集頁の特写に用いられている。写真枚数としては、むしろこの頭部モデルの方が多い。
↑ 頭部モデル。「新ゴジ」としか表現しようがない素晴らしい84造型である。
頭部モデル(かなり形状には変化があったらしい)とローアングル写真を見る限り、琥珀色の眼と頬ラインを除き、生頼テイストは寧ろ控えめに感じるが、ド直球ストレートの1984年当時の「新ゴジ」※3造型であり、大変素晴らしいものである。
素晴らしい造型を語る尺度は様々あるが、「時代性」を内包しているモデルは、そう多くはない。※4
加えて、このモデルからは、多くの書籍を飾った素晴らしいモスゴジやビリケンラテックス初ゴジを製作していた、ヤマダ氏絶頂期の「勢い」が伝わってくる。
ちなみにこの時期、まだ原氏のサイボット以外の立体がほぼ存在しておらず、製作時期を考えると、「“新ゴジ”全身像のリアルモデル」としては、これ、ほぼ第1号になるんじゃないか!?という仮説も成り立つ。※5
返す返すも、写真数が極端に少ないのが、残念を通り越して無念ですらある。
このモデルの全身像を視る術は、もうないのだから…。※6
あなたの知らない84ゴジラ造型の世界 その2へつづく。 次回もお楽しみに。
※1
「決定版ゴジラブックス」シリーズかと思われる。
同シリーズは「別巻1 新・ゴジラ」と「別巻2」の84メイキング本が刊行されている。別巻1は未入手であり、未確認なのだが、上記ヤマダ氏のブログを参考にすると、このモデルが使われていたとは考えにくい。
※2
製作記事中、パースモデルとして製作した、とある。
ここで疑問点が一つ。おそらく「決定版ゴジラブックス」用であろう原型に何故パースを付けたのか、という点である。多方向から撮られるジオラマ特写用として造られたものであるならば、そのような形状はむしろ不利なのではないだろうか。或いは表紙用として企画されたのだろうか。
※3
拙ブログにおいては解りやすく、84ゴジラと書くことが多いが、「スーツやサイボットも内包した、1984年のニューゴジラ」という概念として、ここではあえて「新ゴジ」呼称を用いる。
※4
しかし、こと84ゴジラに限って言えば、映画製作時期とガレージキットの発展期が重なったこともあり、優れた作品が多々見受けられるのである。このモデルに加え、速水氏30㎝、原氏ソフビ改造森山氏30㎝、ダイモス中井氏50㎝ラテックスモデル…と84ゴジラは非常に恵まれている。
※5
ガレージキットの文脈で語れば、84ゴジラは先の特集で取り上げたモデルの多くがそうであるように、先ずサイボット系の立体化からスタートしている。ボークスJr川岸氏のモデルが雛型ベース、同社OH30cmはサイボット顔。 意外にも、スーツ版は(発売されたものに限ると)原氏の20㎝ベース付きモデルを85年末まで待たねばならない。
※6
今回、この特集作成のため、FBを通してヤマダ氏に連絡を取らせていただいた。「青山にあった信越シリコンの販売店に貸して、しばらくウィンドウに飾っていたんですが、その店もなくなり、どうなったのか、わかりません」とのことであった…。無念…である。