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1993年の新作ゴジラ


●1993年ってこういう時代だったよね。

93年。

バブルは崩壊していたが、まだまだその余波は大きかった時代のお話。

ゴジラを「プログラムピクチャー」としてみた時、絶頂期はこの年だったと思う。

前年末に公開され大ヒットを記録したVSモスラ。それに伴う新商品が毎月のように発売されていた。※1

この時期、怪獣ガレージキットもまた、大きな変化を迎えていた。

安価に量産されたソフビキットは、一般の店舗や映画館でまで販売され、中高生でも買えるようになる。※2

前回記事で取り上げた「トリアーデ広告」などは、そんな状況の中でいかに「異常な事態」だったのかが、お解りいただけるだろうか…。

今日紹介したいこの作品、そんな時代の中で生み出された「鬼子」とも言えるキットである。

原詠人原型 「ゴジラ’94」※3

さて、このキット、発表までかなり焦らされた印象が強い。

VSモスラ公開時のMG誌特集の中で原氏のインタビューが掲載され、その中で「久々のゴジラキットを出します」との一文があったのだ。

●84か!?VSか!?

92年末のこのインタビューを受け、気持ちの落ち着かない日々を過ごすことになる。

できれば原氏の84新作が見たい、でも、時流的に恐らくVSゴジラだろうなぁ…という期待半分、不安半分で待つこと約1年弱(くらいだったように思う)。

はたして原氏の新作ゴジラは発表された。

●ある意味どっちも正解だった。

超獣伝説が先だったか、HJ本誌広告が先だったか記憶はあいまいになってはいるが、兎に角…面食らった。

「これ、殆ど84じゃん!!」

超獣伝説に書かれている事でもあるが…この角度、口角、目つき、そしてなによりも、頭部のライン。これは殆ど84の面構成である。

氏の巻末コメントも伴い、「原氏は骨の髄まで安丸造型が好きなんだなぁ…」と妙に納得したものである。※4

おおよそ皆さまも似た印象を受けられたのではないだろうか。

この脚部の処理!尻尾の上がり角度。

まさに原造型の極致である。氏のファンとしてはこのあたりもまた…タマラナイものがある。

反面、後頭部からボディに流れるラインには「VSゴジラ」の主張が見られる。

●それでもこれは「VSゴジラ」だということ。

このキットをVSゴジラとして捉えると、ラドゴジよりバトゴジに印象が近いように思う。

因みに、VSゴジラのスーツ自体、84からの影響を多分に受けた造形なのである。

以前、84の2号を少し造ってみた時に気付いたのだが、眉を伸ばしたり、顔のバランスを少しいじると…案外VSシリーズの、特にバトゴジ顔に印象が近くなる。 安丸テイストに近づけたのが、原氏の意図的なものなのか、そうなってしまったのかは、今となってはわからない。 しかし、VSゴジラとして大外ししているわけではないことは、強調しておきたい。

 ↑ バトゴジに視える「瞬間」がある。

●比べるならこのモデルだよね。

VSゴジラの最大公約数として造られた諸岡氏のコンセプトモデル。 こちらは、明確にVSゴジラと「解る」造型。

小林ゴジラの最大公約数として造型されており、安丸ゴジラを強く意識させる原94ゴジラの真逆に位置する。

どちらも、「どの個体にも明確に似せてはいない」為、その精神性の差が非常に解りやすく出た好例といえるだろう。

●さいごに。00年代に話題になった思い出。

パオパオさんの掲示板だったと思うが、歴代ゴジラの名キットを挙げていく企画で、かなり健闘していた。

当時、私はまだ大学生だったと思うが「やはりガレージ界の諸先輩方は、キットの精神性、個性を大事にしておられる方が多いんだなぁ」と嬉しくなったことを覚えている。

VSゴジラとして造られながらも鬼子のような存在になったこのキット。その立ち位置自体もまた、実に84ゴジラ的だと言えるのが、非常に興味深いところだ。

そして原造型の醍醐味を堪能できる名作であることも、再確認していただけたと思う。

次回はMM28氏のサイボット発売記念として、原氏の傑作も含めた歴代サイボットキット紹介を予定しております。お楽しみに。

※1 VSギドラあたりから始まったガレージキット的「技術」の一般市場へのフィールドバックも特徴。 食玩にまで「ショッキラス」や「原子熱戦砲」が付属し、大手模型メーカーからも「原型師名を明記した」ソフビキットが販売され、それが地方都市の玩具屋でも買えるようになっていた。

その一つの極致として、ラジコンゴジラの発売が挙げられるだろう。なにせこの商品、イノウエアーツ製の外皮を纏っている…。

※2 ひねくれものの私などは新製品のソフビキットへの関心がほぼなかったがゆえ、もっぱら津市の古書店で80年代のHJの立ち読みに時間を費やしていた。「あぁ、昔はよかったなぁ…」と。

いや、80年代ってたかだか数年前なんですけどね。ホラ、このくらいの年頃の1年ってデカいじゃん。隔世の感がありましたよ。

※3 これは一応「ラドゴジ」として造られているため、本来は「93」が正しい。

※4 「安丸怪獣は不滅です」とあった。

これを受けて、「安丸氏がもしVSも手掛けていたら」という仮定で造られたコンセプトモデルなのではないかなどと、よく妄想したものである。

怪獣ガレージキット

ヒストリー

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